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朧月
徒然ト、目に映ル物・思フ事。結構な確立でネガティブなのはご愛嬌。
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2024-11-23 [Sat]
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2009-11-03 [Tue]
夢とは奇妙なものだ。

夢だから起こり得ること、
夢だから許されること、
そんな諸々のこと。

そして、
夢だから確かめられることも、ある。




-―――――――――――――――――――――――――――――



何もかもが燃えてしまって、
誰も彼もが途方に暮れていた。


焦げ付いた建物の黒、剥き出しの鉄骨は
まさに亡骸と呼ぶに相応しくて、
俺は大袈裟にも世界の終わりを想像していた。




どれ程の間立ち尽くしていたのか、それは今となってはもうわからない。
けれど、不意に


“嗚呼、いけない。
大切なものを、あの場所に忘れてきてしまった。とても大切な…”


そう、思いだした。
だから、瓦礫の中を踏み分けて歩いた。
未だ僅かに漂っている煙も
いっそ無様なだけの日常の残骸も
気にはならなかった。




そうして、辿り着いたのは微かに見覚えのある部屋。
そこにはもう壁と呼ぶべきものさえ存在してはいなかったけれど、
何か懐かしい気配のようなものが横たわっているような気がした。


かつて部屋であった場所、いつか生きていた空間
もう何であったかも解らなくなってしまったガラクタの中、
「大切なもの」を探していた。





やがて、指先が煤で黒く染まる頃
冷たい何かが手のひらに触れた。

見るまでもなかった。
探していたのはこれだって、指先が覚えていたから。




焔に焼かれて溶けかけた外殻、薄汚れたディスプレイ
記憶の中のそれとは随分違ってしまったけれど

しかし、それは紛れもなく
「Walkman」だった。





-――――――――――――――――――-――――――――――――

そんな夢。
夢の中でさえそんなものに縛られている俺を、
君は笑うのかな?

だけど、それでもなお流れたメロディに
俺はひどく安堵したんだよ。


眩暈がしそうな都市の亡骸の間でも
気がふれそうな廃人の群れの中でも
たった数センチの箱とコードで俺は救われる。


もしかしたら、
そんな異常な俺の正常に
君は泣くのかも知れないね。
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