イアホンとプレーヤー

玄関を出たところで
重大な忘れ物に気が付いた

俺は慌てて取りに戻る
それが無い世界はあまりにも退屈すぎて
俺は簡単に絶望を抱えてしまうから

これは
感傷的な誇張に満ちた
嘘だってのは知っている

実際の俺は
至極簡単な代用品を
すぐに見つけてしまうから

それなのに
こんな風に大袈裟に言ったのは
それ程に大切だから

どこか褪せていて
重大な意味ばかりを孕んでいるような
数学的な世界は
俺には重すぎる

これは魔法の装置
世界が色付いて
クダラナイもので溢れだす
疲れたらボリュームを上げればいい
そして目を閉じればいい
糸の細さで世界と繋がりながら
違うどこかを漂えばいい

クダラナイ魔法に願う
さり気ない逃避

イヤホンと活字の海の必要性

自分というものを時々見失う
その度に独りを思う

物足りなさを感じていた「独り」への適応
否、回帰と呼ぶべきか


すこぶる楽だと思う
いっそ放っておいて欲しいとさえ思う

花も実もない関係なんて
疲労を誘うだけさ

中身の話じゃなくて
気持ちの問題
宙を彷徨う自分に気付く

自分らしさを失って
外郭との距離だけが重なっていく。

宝物を１つ

忙しくても　上手くいかなくても
自信がもてなくても　迷っていても
今日は昨日になり　明日はまた今日になる

会うことは難しくても　思いは届くから
ただそれだけで、明日も生きていられるのだろう

目まぐるしく過ぎていく日々の中で
それでも思い出してくれたその有難さは
何にも変えがたく　誇らしい。

つかず離れずな関係なんてない
今はそう思う
離れた分近づいて
抑えすぎた分離れるのだ

君とだけは　それでいいと思う
気に入らなければ　すぐに逃げ去ってしまう様な
そんなところでさえ、似ているという俺等だから
今でもまだ、お互いに届く距離に居る
それだけで十分だと思うんだ



誰が見てもくだらないもの
それが宝物
特別な言葉など何ひとつ無くとも
今日、君から届いたこの手紙は
きっと死ぬまで棄てられない

それでも懐う、ただそれだけ

忙しすぎたり
肉体的に病んでいたりすると
反って精神的には病まないタイプらしい

忙しさの原因は大半教職課程であるが
同状の友人は激しく病んでいた

まぁ、単純に精神が病む前に肉体を病んでしまうからかもしれない
熱が出たり、胃痛がしたり、頭痛がしたりしていては
そんなくだらない事などどうでもよくなるのだ

どうであろうとも
日々は変わらず続いて行きやるべきことも積まれて行く
病んでいる暇などない

ただ時折
会いたい、と無性に思うことだけ

やさしさを捨てても歩いていけるのならば

色々なことがとりあえず一段落した
とたんに糸が切れてしまった

久しい、空っぽな感じ
煩わしい、苦しい感じ


「諦めたら楽になる」
そう母は言った

全く関係のないことに対して言った言葉
何故か、今のこの状況にこそ当てはまるようで

退屈ばかりの日常の中で
時折深みにハマってしまうから
出来れば流れるように生きていたいと思う


「此処にいるから安心して」
そう俺は言った

どうしようもなく彼女に会いたいけど
何故か、それは怖いことみたいで

嘘だらけの毎日の中で
時折溢す真実だから
願わくば届いていて欲しいと思う


ようやく咲ききった桜を
今日、冷たい雨が濡らしてた

あんな風に
取り留めの無い願いまで
いつかは散ってしまうのかな

気まぐれでも　ただの交差でも
笑い合った人もいて
晴れろとは言わないから
せめて傘があればいいと思う
肩を濡らしながらでも
分け合える影が